[評論] TBSのストライキとネットの反応
普段あまりリアルタイムでテレビを見ることがないので、このこともネットのニュースで知ったわけですが。
テレビ局のストライキで、アナウンサーが出なくなるのは珍しいですよね。
それで、この件に対する「Yahoo!ニュース」での反応を見てみると、予想通りというか、あきれる内容ばかりでした。
もっとも、このコメント欄は2ちゃんねる以上に非人道的なコメントが書かれることが多いことで知られており、そんなところをのぞきに行くのは、自分から肥だめに突っ込んでいくようなものですが。
その中から目立ったコメントをひとつ紹介します。
世間一般よりはるかに高い給料でそういうことをするのは常識外。 テレビのキー局だからといって今はケーブルやビデオなどもあるし この不景気でCM収入も減っているのに何考えていると思う。 縁故採用が多いのが原因ではないのか? 下請け会社に安い金額で番組を作らせているくせに 苦労知らずのお坊ちゃまやお譲ちゃんが多すぎる。
へー、あなたは普段よっぽど苦労なさっているんですねー。お察しします(棒読み)。
これと同じ人の、別のニュースに対するコメントがこれ。
あんな人権もなく知的財産も人の国も侵略する国とアメリカが本気でつきあうとはおもえないが、 半島の国と中国はアジアの恥だ。適当にあしらっとけ。
中国人と韓国人に、何かひどい目にあったことがあるのでしょうか。まさか、ネットの情報だけを鵜呑みにして、見ず知らずの人々を嫌ったり差別したりしてないですよねぇ。まさかね。ははは。
この人のほかにも、TBSを非難していた人が、別のニュースで人種差別的なことを書いていた例が目立ちました。
ちなみに、別の人が書いた常識的なコメントに対しては…。
争議権は労働者に保証されている当然の権利。頑張れ!
「私はそう思わない」の評価が、「私はそう思う」の2倍でした。
このコメントを評価している人の3分の2が会社の経営者なんでしょうか。んなこたーない。
「この話題に関するブログ」をざっと見てみても、TBSを非難する言葉が並んでいました。数あるブログサービスの中でも、Yahoo!ブログのユーザーは全体的に偏った(端的に言えば「思いやりのない」)人が多いように思います。もちろん全員がそうではなく、あくまで割合の問題ですが、サービスがニュース欄と連動しているのがその理由でしょうか。
次にmixiの日記を見てみました。TBSを叩く人は、Yahoo!ブログほど多くありませんでしたが、それでも「少数派」といえるほど少なくもありませんでした。
2点抜粋します。
そしてストのために現場を放棄するプロ意識の無さ。 本当にどこまで浮世離れしているんだろう?
ストライキしなきゃ意見も伝えられんのか? 上が話を聞かなくても本来ある仕事をホッポリだして穴をあけるとはプロのカザカミにも置けない。 雇用側は即刻クビにして業界で仕事できないようにしちまえ
プロ意識があるから、賃金や待遇に不満が出てくるんじゃないのかな?
労働が生み出した価値に見合わない低賃金で働くことこそ、プロ意識の欠如であり、労働に対する冒涜でしょう。
「雇用側は即刻クビにして業界で仕事できないようにしちまえ」なんて、何か個人的な恨みが透けて見えるようなコメントですね。会社の経営者で、ストを起こされたことがあるとか。でもそれって、ストを起こされるような待遇とか、まともに給与を支払えないほど利益の出ないビジネスモデルの欠陥を放置していた経営者が悪いんじゃないの?
一方、当該ニュースに対する「はてなブックマーク」を見てみると、見当違いな非難はほとんど見られませんでした。同じネットでも、コミュニティによってかなりの温度差があります。
ストライキなどの労働争議は、労働とその対価の不均衡を是正するための正当な手段であって、そこではもともとの給与水準は関係ありません。「年収200万円の人が300万円分の仕事をしている」「年収1000万円の人が1500万円分の仕事をしている」という両方のケースで給与アップを目的としたストが行われたとして、前者が「良いスト」で後者が「悪いスト」などというのは、恣意的判断以外のなにものでもありません。
そもそも、TBSと何の利害関係もない人たちが、なぜ怒る必要があるのでしょうか。彼らの言葉からは、妬み以外の感情を読み取ることができません。
そして、その妬みがこじれると「雇用者側について労働者を叩く」という行動に出るのでしょう。少し前に派遣村の人々を叩いていた人たちの心理も、これと似ていると思います。上のYahoo!のコメントで、TBSだけでなく中国や韓国を叩いている人なんかは、「常に誰かを叩いたり差別したりしないと精神がもたない」という、かなり危険な領域に入ってしまっているように見えます。この前に書いた、筑紫哲也さんが亡くなったときの反応もそうですね。
以上はネットで見かけた極端な例なので、一般の人々がここまで思っているわけではありません。
でも、日本社会はストライキに対してあまりにも不寛容です。
たとえば、ストで電車が止まったとき、どこに怒りが向けられるでしょうか。おそらく多くの人が、「ストを起こした労働組合」を叩くでしょう。本来なら真っ先に「ストの原因を作った会社」を非難するべきだと思うのですが。
ストライキそのものを否定することは、労働者にとって自分で自分の首を絞めることと同義なのですが、ストなんて身近な場所で頻繁に起きるものではないし、そこまでなかなか考えがおよばないんですよね。
例外といえるのは2004年にプロ野球選手会が起こしたストですが、あれだって中身は「選手会がNPBに対して権利を要求する」という労働争議そのものであって、「近鉄バファローズの消滅を阻止」「やむを得ない場合は新球団の創設を」という表面的な要求が、たまたまファンの意志と重なっていたから支持されただけのこと。もしストの要求が「給料のベースアップ」「年金制度の創設」とかだったら、どんな反応だったでしょうか。
労働者の権利が軽視されすぎているのがこの日本社会です。何より労働者自身が、権利を主張したり運動したりする労働者を非難する、たがいに足を引っ張り合う現状ですから絶望的です。
この間の派遣村問題だって、そのベースにあったのは伝統的な「労働者軽視」であり、その風潮を作っていたのは決して経営者だけではありませんでした。
僕も過去に、非人道的な労働環境を強いてきた会社に対して労働争議どころか、組合を作ることもできずに逃げてしまった過去があるので、偉そうなことは言えませんが、僕たち労働者はもっと自分の労働力を高く売ろうと常に考えるべきだと思うし、過剰な搾取や不正を行う経営者は厳しく非難すべきだと思います。公務員であろうが、高給取りのマスコミであろうが関係ありません。不正は不正ですから。

最近のコメント