情けは人のためならず

2007年3月 8日(木) 01:19 | 日記

今日の昼、とあるラーメン屋へ行った時のこと。
カウンター席で、左隣には僕と同じくらいの年齢のサラリーマンが座りました。

食事の時は音を立ててはいけないというのが欧米のルールです。しかし、東洋ではこの点に関して寛容です。特に、ラーメンやうどんなどの麺類は、音を立てて食べることが公然と許されています。
とはいってもやはり、ものには限度があるわけで。

その客は、どんぶりに口をつけながら、ものすごい音をたててラーメンをすすり始めました。
右隣のお客さんも、そのまた隣の人も、確かに音を立てて食べています。しかし、それは常識の範囲内の音です。
あれほどの音を出して食べる客は、普通のラーメン屋にはいません。
さすがに腹が立ちました。
ここはお前の家じゃないんだ。周りに人がいるんだし、もっと静かに食え。
僕は舌打ちをしたりして、相手に対してあからさまに不快感をアピールしました。
相手はそれに気づくと、どんぶりを少し左の方に寄せ、再び大きな音を立てて食べ始めました。「席を左に詰めてほしい」と勘違いされたようです。
しばらくしたら、音が止みました。もしかしたら、いっしょに来ていたもう片方の隣の人に何か言われたのかもしれません。とにかく、嫌な音が聞こえなくなってひと安心です。

問題は、なぜあのような輩が現れるのかということです。
まず考えられるのが、これまで誰もその男に対して、迷惑行為をしていることを指摘しなかったのではないか、ということ。
よくこの日記にも書くのですが、駅のホームや構内など、禁煙場所に指定されているところで平気でタバコを吸う人間がいます。僕はあえて不快感を全身で表現したりするのですが、他の人はみんな知らん顔。心の中では嫌だと思っている人は少なくないはずなのですが、そんな人間には誰も関わりたくないんですね。まあ、その場さえやり過ごせば問題ないわけですから。
とはいえ、迷惑行為に対して、誰も何も言わなければ、本人はまず気づきません。「自分の行為は社会に認められている」と解釈されても仕方がありません。そうなってしまうと、居心地が悪くなるのは、迷惑行為をしていないすべての人です。
それがたまらなく嫌だから、僕はあえて意思表示をします。とはいえ、ラーメン屋でもそうでしたが、直接言葉で注意するわけでもなく、「嫌そうな素振りを見せる」という回りくどい方法で、相手に不快感を伝えようとするだけのことですが。やはり僕も「面倒なことには関わりたくない」という気持ちがあるので、現実と理想の妥協点として、こうした方法を選んでいるのが現実です。卑怯だと言われるかもしれませんが、それでも何もしないよりはずっとましだと信じて、姑息な方法ですが「お前の傍若無人な行為で迷惑している」ということを伝えようと日々努めています。
もうひとつの理由は、そもそも親がちゃんとした教育をしてないんだろうな、ということ。もっともこればかりは、すでに子育てを終えて悠々自適の生活を送っているであろう世代に対して、文句を言ったところで何も始まりはしませんが。

「情けは人のためならず」ということわざがあります。
最近の若い人は、このことわざの意味を間違ってとらえている人が多いようです。
「人に対してむやみに情けをかけることは、その人のためにならない」という意味ではありません。
本来の意味は、「人に情けをかけるのは、その人のためではなく、自分自身のためである」ということです。
公共のマナーを守るのは、周りの人たちへの気配りが目的ではありません。むしろそれを手段として、自分にとって居心地のいい社会を実現することこそが真の目的です。自分が率先してマナーを守らなければ、周りに対して「マナーを守れ」なんて言えないですからね。

もっと分かりやすい例で説明します。
僕はよくゲーセンへ行きます。「クイズマジックアカデミー」というゲームはわりと人気で、4台すべて満席ということも珍しくありません。
中には、後ろで人が待っていても、席を空けない人もいます。
でも僕は、待っている人がいたら、ゲームが終わったらすぐに席を譲り、再び並んで順番を待ちます。
「満席時は1回交代」という暗黙的なルールが守られているゲーセンは、そのゲーセンの常連のプレイヤーが率先して席を替わるようにしています。ライトプレイヤーはその姿を見て、「待っている人がいたら席を譲るのが大人のマナー」ということを知り、実践するわけです。
逆に、誰も席をどかないようなゲーセンは、常連のプレイヤーも席を替わることをしません。そりゃ本音を言えば、誰だって飽きるまでゲームをしていたいから、席を空けたくない。でもそれをしてしまうと、今度は自分が満席の時にゲーセンへ行ったら、いつまでたってもゲームができなくなってしまうわけです。
さて、皆さんならどちらのゲーセンを選びますか?
たとえ筐体に「待っている人がいたら交代してください」という注意書きがなかったとしても、席を譲ることができますか?

「情けは人のためならず」ということわざがあります。
周りへの気遣いは、やがて自分にも返ってきます。
周りに気を遣わない人間は、自分もそういう扱いを受けることを覚悟しなければいけません。少なくとも、僕はそのような人間を、きちんとマナーを守る大半の人たちと同列に扱うことはしませんので。

コメントを投稿

※サーバーの状況によって、投稿完了まで時間がかかることがあります。
※投稿内容がすぐに反映されないことがありますが、ページを再読み込みするとコメントが表示されます。
※入力したURLは公開されますが、メールアドレスは公開されません(管理者に対してのみ通知されます)。